開けるとフワフワ、
寝具・防寒具に
“災害列島”に暮らす私たち。2024年8月には「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が史上初めて気象庁から発表され、防災グッズを買い求めたり、中身を点検したりした家庭や企業が多かったといいます。ただ飲料水などは備蓄していても、「非常用の毛布を用意している」という人はそう多くないでしょう。しかし災害時、とりわけ避難所以外の建物や車、屋外に避難する場合、寝具にも防寒具にもなる毛布は必要不可欠といえます。
とはいえ、季節を問わず襲ってくる災害に備え、毛布を用意しておくのは意外に簡単ではありません。各家庭に毛布はあるでしょうが、冬場を除き、押し入れにしまい込んでいては万一の場合に取り出せません。かといって、すぐ使えるように保管しておくにも、かさばって置き場所に困るでしょう。企業や自治体なども備蓄のスペースは限られています。圧縮袋で小さくする方法もありますが、何年も保管するとカビやダニ、悪臭が発生したりする恐れがあります。そして、そうした課題を解決できるのが、創業約75年の繊維メーカー・足立織物(兵庫県多可町)が開発したこの「非常用圧縮毛布」です。
四角い紙箱のパッケージはA4サイズと同程度で、厚さわずか5センチ余り。本棚や机の引き出しに収まります。非常時はハサミを使わず開封でき、パッケージからは想像できないほど、フカフカで肌触りの良い毛布が入っています。それを可能にしているのが、足立織物独自の圧縮技術。120センチ×200センチの毛布を「ゾウよりも重い力」で元の約7分の1に大きさに圧縮し、真空パックしています。この一枚の毛布に、同社の繊維メーカーとしての歴史と培ってきた技術、アイデアが詰まっています。
1950(昭和25)年創業の足立織物は、兵庫県のほぼ中央に位置する北播磨(はりま)地域特産の播州(ばんしゅう)織の工場として始まり、現在は繊維製品の企画製造販売を手がけています。2011年の東日本大震災の際、首都圏で多くの帰宅困難者が出たことから非常用圧縮毛布を発案。商品誕生の礎となったのが、2代目社長(現会長)の足立利信さん(76)が特許を取得した「真空パッキング」技術です。元々は、葬儀などの返礼品として取り扱っていたタオルを「持ち帰りやすいようにコンパクトにできないか」と模索したのが技術開発のきっかけでした。その圧縮技術は、民間の宇宙関連事業で宇宙空間での実験に使われるほど。A4サイズの非常用圧縮毛布は日本一の圧縮比率を誇り、13年の販売開始以来、これまでに売り上げた数は行政や企業を含め約50万枚を数えます。
毛布は遠くからでも目立つオレンジ色で、救助を呼ぶ際の目印にも。広げて担架の代わりにも使えるなど、使う人のことを考えた工夫が随所に施され、グッドデザイン賞にも選ばれました。「求められていることをいち早くキャッチし、形にして、お客さまへ届けることを信念にしています。取引先やお客さまの困っていることが、ものづくりのきっかけになることが多いです」と話すのは12年に入社し、21年に父から社長職を引き継いだ3代目の足立美由希さん(34)。圧縮毛布のほかにも、衛生的に長期保管できるようパッキングした男女兼用の下着や子ども用・大人用のおむつ、生理用品を防災用品として販売するなど、女性が8割を占める約20人の従業員とともに、時流を捉えた挑戦を続けています。
商品詳細
毛布サイズ:120センチ×200センチ
毛布重量:930グラム
毛布材質:ポリエステル100%
化粧箱サイズ:30センチ×22センチ×5.2センチ
保存年数:10年(足立織物でリパックサービスも実施しています)