絵本「かなしきデブ猫ちゃん」その2
その1
ひょうごに広がる
〝マル〟旋風
地場産業とコラボ
「郷土愛を育む」。これはマルの旅の大きなテーマであることから、地場産業や観光協会などとの連携も重視してきました。
マルが神戸に上陸後、栄光教会でもらったストールは播州織、手に持っていたのはフランスパンです。兵庫編第2シリーズでは播州織作家玉木新雌(タマキニイメ)さんをモチーフにしたデザイナーの猫「ニーメさん」が登場。タマキニイメさんとコラボし、読者にストールをプレゼントするキャンペーンを実施しました。


日本三大瓦の一つで、400年以上の歴史がある「淡路瓦」の職人興津直子さん=南あわじ市=に、マルの招き猫とコースターを製作してもらいました。地場産業とのコラボ商品第1号となりました。
招き猫は高さ14.5センチ。右手を上げ、左手にはトレードマークのフランスパンを、頭には兵庫編第1シリーズに登場した明石タコのハチベエがのっています。コースターは直径9.5センチ、厚さ7ミリ。通常、淡路瓦の表面は炭素膜で覆われ水をはじきますが、コップに付いた水滴を吸うよう、炭素膜をかけずに焼いています。いずれも重厚感があり、耐久性に優れています。
興津さんは「一つ一つ手作りで、商品の形やマルの表情が違う。自分だけのマルを楽しんでほしい」と話しています。
企業とコラボ

2024年春から山陽電気鉄道にマルのヘッドマークをあしらった「デブ猫電車」が登場し、人気を集めました。直通特急(阪神大阪梅田―山陽姫路)と普通(阪急・阪神神戸三宮―山陽姫路、飾磨―山陽網干の車両に使用されました。3月下旬~4月上旬にはマルと、同電鉄の公式マスコットキャラクター「ろっくん」が、神戸市須磨区の須磨浦公園で行われたイベント「敦盛桜」を盛り上げました。

2023年4月から1年間、県内18市町約17万人の児童生徒たちが、マルのイラストが掲載された共進牧場の「共進3.5牛乳」を学校給食で味わいました。24年4月からは、1リットルパックも発売され、京阪神エリアの大手スーパーに並んでいます。
学校の授業に活用
マルの物語を授業に取り入れ、読み聞かせをしたり、自分たちが暮らす町の魅力を考えたりする学校が増えています。
全校児童10人の神河町立長谷小学校では2023年度、2、4年生の授業で毎週、第2シリーズ「マルの真夏のプレゼント」の読み聞かせを実施しました。4年生は社会科の授業で、兵庫県について学習する素材にこの物語を使ったといいます。
さらに、学習発表会では、「デブ猫ちゃんマルの兵庫五国の旅、伝えよう長谷のすてき」という演目で、児童たちは心に残っているシーンや感じたことを発表。「マルに地域長谷のすてきなところを教えたい」と、その魅力を伝えるリーフレットも作成しました。
担任の高寄優子先生は「児童たちは、マルを自分たちの仲間のように思い、冒険を一緒にたどりました」と口にし、「人を見た目で決めつけるのはよくないことや出会った人を大切にすることなど、物語を通して多くのことを感じていました」と話しました。
神戸新聞で兵庫編の連載が始まってから、毎週欠かさず、マルに宛てて手紙をくれる男の子がいます。イラストを添えて、覚えたての字を一生懸命つづってくれます。
「自分の名前が書けるようになったよ」
「小野市のひまわり公園 楽しかった―」
「マラソン大会走ることができたよ」
「マルくんはぜんぶすき」
5歳だった男の子は今年、小学校3年生になり、手紙は200通を超えました。マルにとって不安しかなかった兵庫の旅で、いつも勇気を与えてくれる「親友」です。
マルが兵庫編で繰り返し口にする言葉があります。
「オレは楽しく生きるだけだ」
「行きたいところに行って、見たいものを見る」
「会いたい人に会って、食べたいものを食べる」
「誰よりも大笑いして、誰よりも感動する」
「誰よりも胸を張って生きていく」
そんな素敵な人生を送るために必要なのはたった一つ。
一歩踏み出す勇気です。
マルの一番の武器です。勇気は人から人へ伝わります。この物語はマルが兵庫県内各地でたどった「勇気の軌跡」が詰まってます。