兵庫県内を旅して3年
マルが残した「勇気の軌跡」

「兵庫県民が誰でも知っている物語を作りたい」
「今の子どもたちが20年後、父親、母親になっても、その子どもに語り継げる物語にしたい」
2022年4月、愛媛から兵庫に上陸した創作童話「かなしきデブ猫ちゃん」の主人公・マルの旅は、このような思いを持って神戸新聞で始まりました。
スマートフォンの普及などで、新聞離れの加速は容赦ありません。「地域の情報を詳細に伝える」。地方紙として期待される役割だけでは限界があります。自分たちのまちにやってきたマルを通して、まちの魅力を、そこに暮らしていく誇りを県民、読者にあらためて感じてもらいたい。そんなストーリーを発信することができたら、新聞の力をもう一度、取り戻せるのではないか、そう考えました。


もう少しマルのプロフィールを紹介すると、3歳雄のクールなハチワレ猫で、身長55㌢。胸囲55㌢。ウエスト55㌢。足の大きさは5・5㌢。「5」づくしですが、体重だけは10㌔です。その体格から「デブ猫ちゃん」と呼ばれ、多くの人に愛されています。魅力を言葉にすると「ブサかわいい」。これがマルの人気のポイントのようです。
「広い世界を見てみたい」と大親友のアンナや恋人のマドンナたち仲間に別れを告げ、松山から旅立ちました。神戸に向かう船の中で出会った桜子という女の子の願いをかなえるため、マルの兵庫五国の旅がスタートしました。

兵庫1巡目(2022年4月~23年1月)をつづった第1シリーズ「マルのはじまり鐘」(全36話)の絵本は、累計発行部数約1万冊、販売総数は8千冊を突破しました。
2巡目(2023年4月~24年1月)を収めた第2シリーズ「マルの真夏のプレゼント」(全36話)も発売まもなく重版が決定。累計発行部数約6千冊、販売総数も約5千冊を記録しています。
3巡目(2024年5月~25年2月予定)の第3シリーズ「マルの怪盗Xを追え!」(全37話)も25年春に絵本化する予定です。
第1・第2シリーズとも絵本の世界でベストセラーとされる3千冊 を大きく超えるヒット作品になりました。兵庫県内の全小学校、特別支援学校の図書館にはこの2冊の絵本が寄贈されています。

地域で暮らす人々が誰でも知っている物語にすることは容易ではありませんでした。この3年間、県内の30を超える市区町に足を運び、祭りや学校行事など約250のイベントに参加しました。「兵庫五国」の9会場で挿し絵や新聞バッグなどの巡回展示を重ね、マルが訪れた町を中心にスタンプラリーも実施しました。
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